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湯の山スパシア周辺情報

伊勢の東の玄関口・桑名でふたつの“華”めぐり【前編】

多度大社やなばなの里、ナガシマスパーランドなど、三重県でも指折りの観光施設を有する桑名市。古くは“伊勢の東の玄関口”とも言われ、東西の文化が交流する場所でもありました。

今回は“華”という言葉をキーワードに、桑名市の穴場観光スポットをご紹介。長良(ながら)川と揖斐(いび)川、伊勢湾に囲まれ、“水郷の町”として親しまれた桑名市の魅力をご紹介します。

※2023年4月27日取材時点の情報です。

 

【桑名駅】水郷の町として栄えた、かつての面影を探して

大阪駅から名古屋駅を経由し、電車に乗ること約2時間。レトロモダンな外観が印象的な桑名駅に到着しました。

GFC湯の山スパシアからは車で約25分。電車でお越しいただく場合、湯の山温泉駅から近鉄湯の山線に乗り、四日市駅で乗り換え、近鉄名古屋線で桑名駅まで向かいます。

室町時代には商人によって“自由都市”が形成され、江戸時代には桑名藩の城下町としてさらに発展。東海道五十三次の宿場・桑名宿も置かれ、多くの人が集い交わる場所としてその名が知られていました。

町を歩いていると、その面影を感じる標識や看板があちこちに。

帆船をイメージした案内板や海運の様子を描いたマンホールが、かつて桑名市が水運業で栄えた歴史を伝えます。

マンホールといえば、こんなモチーフも。

桑名の名物、蛤(ハマグリ)です。

木曽三川と伊勢湾に面し、豊かな水源に恵まれた桑名市は、水産業が盛ん。特にハマグリは、「その手は桑名の焼き蛤」という言葉があるほど、桑名を代表する名産品となっています。

桑名駅から各観光地に向かう際には、ぜひ町の至る所にある“桑名モチーフ”を探してみてくださいね。

 

【六華苑・洋館】映画のロケ地にも選ばれた、ジョサイア・コンドルの名建築

桑名駅から揖斐川方面に向かって歩くこと約15分。ひとつめの“華”の目的地「六華苑」の入口が見えてきました。

こちらの建物は、かつて“山林王”と呼ばれた桑名きっての実業家・二代目 諸戸清六(もろとせいろく)の新居として建てられたもの。敷地面積はなんと約18,000㎡と、個人宅としては破格の広さを誇ります。

それでは、さっそく門の中に入ってみましょう。

庭木に囲まれたアプローチを抜けていくと…、4階建ての塔屋を備えた洋館を発見!春の青空を思わせる淡いブルーの外壁が、なんとも華やかです。

お屋敷の全景を見るためにお庭にまわると…なんと、洋館に瓦屋根の日本家屋が隣接しています。

こちらの六華苑は、現在では珍しい洋館・和館の混合建築。大正2年(1913年)の竣工以来、一部の改修と戦災はあったものの、ほぼ創建当時のままの形を残しています。

外観を堪能した後は、いよいよ館内へ。六華苑では洋館1・2階と和館、受付ロビーのある内玄関棟、離れ屋を備えた番蔵棟、二番蔵を見学することができます。

まずは洋館から見学していきましょう。

受付ロビーを抜け、真っ先に目に飛び込んでくるのは、開放的でエレガントなホール。お花モチーフのシャンデリアと深紅のカーペットに迎えられ、優雅な気持ちが芽生えます。

玄関扉を彩るのは、夕焼け色のステンドグラス。外壁の青色とのコントラストが素敵です。入口横には外套掛けを備えた待合椅子が置かれ、訪問客への心遣いが感じられます。

1階の一番の見所といえば、広々とした客間と食堂。ヴィクトリアン様式を取り入れたマホガニー材の応接セット、タイル張りのおしゃれな暖炉、陽光をたっぷり取り込む大きな窓など、西洋の建築様式をふんだんに取り入れた、豪華な造りとなっています。

重厚感のある調度品もイギリスやフィンランドなど、ヨーロッパを中心に外国から取り寄せたものばかり。西洋への憧れを強く抱いた、当時の家主の思いが伝わります。

六華苑を設計したのは、明治時代を代表する名建築『鹿鳴館』や東京都千代田区にある正教会の大聖堂『ニコライ堂』などを手掛け、“日本近代建築の父”と呼ばれたジョサイア・コンドル氏

明治10年(1877年)、日本に近代的な西洋建築の技術を教えるため来日したコンドル氏は、多くの公共建築を手がけた後、工部大学校造家学科(現在の東京大学工学部建築学科)の教授に就任。“明治建築界の法王”と称された辰野金吾(たつのきんご)、宮廷建築家として活躍した片山東熊(かたやまとうくま)など、多くの門下生を抱え、建築界の後進育成にも努めました。

続いて、2階へ上がってみましょう。

こちらで注目していただきたいのは、お庭に面した明るい廊下。やさしい日差しに包まれながら池泉回遊式のお庭を一望できます。

さらに奥に進んでいくと、突き当りにはサンルームが。1階ベランダと同じ広さを持つこちらのお部屋は、文字通り陽光が降り注ぐ、当時としては斬新な設計。穏やかな光の中、ロッキングチェアに揺られながらゆったりと寛ぐ時間は、多忙な家主にとってかけがえのない時間だったことでしょう。

また、六華苑を象徴する塔屋にも入ることができます。この塔屋はもともと3階建ての設計でしたが、「揖斐川の風情を愉しめるように」との考えから、4階建てに変更されたとの事。部屋の造りに合わせて湾曲した窓が用いられていますが、当時日本にガラスを曲げる技術は無く、輸入ガラスが使われています。

コンドル氏が手掛けた建築は東京や神奈川など関東に多く、地方で観られる建築は、こちらの“六華苑”のみなのだとか。貴重な調度品や内装など、当時の暮らしを彷彿とさせる空間を、心ゆくまでお愉しみください。

 

【六華苑・和館】古き良き日本のおもてなし文化を形に

ひとしきり洋館を見学したら、和館へと向かいましょう。

和館への入口は、洋館のホールから続く廊下。突き当りに一番蔵を備え、奥から一の間・二の間と続きます。

西洋の文化が取り入れられ始めた明治・大正時代の洋館には、このように和館が接続している造りが一般的でした。しかしながら座敷と蔵まで設けた本格的な和館は少なく、六華苑は大変珍しい建築様式と言えます。

床の間・付書院・飾り棚を設けた“一の間”は、客間として利用されていました。座敷は18畳、次の間は15畳、鞘(さや)の間は6畳あり、ゆったりと寛げるスペースになっています。

棹縁(さおぶち)天井は桐板張、欄間は桐の一枚板を採用。欄間と釘隠しには桐と菊の模様が施されており、どのような来客でも迎え入れられる格式の高さが伺えます。

続く“二の間”は、家主である二代目の諸戸清六の居間として利用されていました。二代目清六夫人が二の間にベッドを置き、病気療養に使っていた時期もあったと言われ、二代目諸戸家の日常生活は二の間が中心になっていたようです。

いずれのお部屋からも美しい庭園を眺めることができ、落ち着いた空間の中で過ごす時間は、訪れた人々に心のゆとりをもたらしたことでしょう。

六華苑では他にも離れや蔵、露地庭園など見所がたくさんありますので、ぜひゆっくりとまわってみてくださいね。

◆六華苑
住所:〒511-0009 三重県桑名市桑名663-5
電話番号:0594-24-4466
営業時間:9:00~17:00
定休日:毎週月曜日
公式サイト:https://www.rokkaen.com/

 

【諸戸氏庭園】桑名屈指の実業家が過ごした華麗なる人生

さて、今回手に入れた六華苑のチケットでは、もう一ヵ所見学できるエリアがあります。

それがこちらの諸戸氏庭園。初代 諸戸清六が生涯を過ごした邸宅で、春と秋のみの限定公開となっています。六華苑内からは入ることができず、一度敷地内を出て、揖斐川近くにある「桑名七里の渡し公園」を抜けると、右手に煉瓦蔵が見えてきます。そのまままっすぐ進み、諸戸会 祭車庫の前を過ぎると、諸戸氏邸宅の入口が現れます。

軒先には、なにやら模様が描かれた提灯が下がっています。こちらの模様をよく見ると…カタカナで“モロト”の文字が!実はこの模様、家主である“諸戸”の名前をモチーフにしているのです。

この模様は庭園にある建物の屋根瓦など随所で目にすることができるので、皆さんも見学の際にぜひ探してみてください。

諸戸氏庭園の入館受付がある建物は、実は主屋。初代・諸戸清六が事務所兼住居として利用していたものです。太い堅格子や黒漆喰の土蔵造りなど、至る所に見えるのは、初代のこだわり。清六は自室内に東海道線の時刻表を飾り、いつでも出かける支度がなされていたそうです。

表門を横目に中庭を抜けると、御殿の玄関となる建物が登場。

接客とサービスを分けるため設けられた二筋の廊下、寄木細工の床やシャンデリアなど、要人の来客を想定した造りとなっています。敷地内には2台のビリヤード台を配した玉交場や黄色の外壁が鮮やかな洋館があり、当時の華やかな暮らしぶりが目に浮かぶようです。

それでは次に、お庭を見ていきましょう。

諸戸氏庭園の目玉となるのが、こちらの巨大な池泉回遊式庭園。緑生い茂る園内には、黄色いお花が鮮やかなスイレン科の“河骨(こうほね)”、花しょうぶなど、四季折々の風景を愉しめるお花が植えられています。今回取材させていただいたのが4月末ということもあり、ツツジや藤が見頃を迎えていました。

お庭でぜひ立ち寄っていただきたいのが、庭内に設けられた草庵『推敲亭』。江戸時代中期の豪商・山田彦左衛門が建てた草庵を諸戸清六が受け継いだものと言われています。こちらの『推敲亭』、実は園内屈指のフォトスポット。障子越しにお庭へカメラを向けると、趣ある写真を撮ることができます。

庭をぐるりと周遊した先に現れるのは、これまた大きな広間。当初の地盤改良として田沼の上に盛り土を施し、柱筋に石垣を積み上げ、床を高くしています。東西面はほぼすべてが開口部となっており、柱を極力少なくしているのだとか。こちらは景色を一体的によく見せるため意図して造られた空間とみられ、初代諸戸清六のこだわりが感じられます。

邸宅には多くの政界・財界人が訪問しており、中には大隈重信山縣有朋といったそうそうたる顔ぶれも。諸戸氏の歴史や邸宅・庭園の深掘り話を聞きたくなった方は、見学の際に歴史案内人(ボランティアガイド)の方を予約しておくのがおすすめ。邸宅・庭内の見所はもちろん、おすすめの史跡や名所など丁寧に説明してくださるので、初めて見学される方はぜひ申し込んでみてくださいね。

◆諸戸氏庭園
住所:〒511-0005 三重県桑名市太一丸18
電話番号:0594-25-1004
営業時間:10:00~17:00
休園日:毎週月曜日
公式サイト:http://www.moroto.jp/

※2023年春の一般公開は4月22日(土)~6月11日(日)

 

【まとめ】桑名観光を愉しむなら、豪華絢爛な「六華苑」と「諸戸氏庭園」へ

今回は桑名ひとつめの“華”の名所、六華苑をご紹介しました。六華苑には館内に休憩できるカフェやレストラン、桑名の名産品を集めたお土産コーナーもございますので、終日ゆっくりお愉しみいただけます。

後編では桑名のもうひとつの“華”の名所、九華公園と周辺スポットをご紹介しますので、ぜひご覧ください。

後編の記事はこちら▶伊勢の東の玄関口・桑名でふたつの“華”めぐり【後編】

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