GFC淡路島から行ける国宝・文化財の旅・神戸~姫路
淡路島から明石海峡大橋を渡れば神戸です。神戸市には国宝の建築物が1棟だけあります。広大な境内のいちばん奥に、鎌倉時代から建っている本堂です。
姫路には、西国三十三所第27番札所で20点近い国指定重要文化財、映画「ラストサムライ」をはじめいくつかの大河ドラマの撮影地になった山寺があります。
GFC淡路島グランデシアから行ける2スポットをご紹介いたします。
目次
神戸唯一の国宝建築~太山寺
淡路島から太山寺へは、明石海峡大橋からそのまま神戸淡路鳴門自動車道を進み、布施畑インターで降りて5分です。GFC淡路島グランデシアからは50分ほどです。
塔頭が並ぶ巨大寺院
入り口には大きな仁王門が建っています。室町時代中期の再建で、国指定重要文化財です。
入り口の仁王門から先はいくつかの塔頭寺院が並び、いちばん奥にある太山寺への参道が続きます。塔頭(たっちゅう)とは僧侶が寺務をしたり生活したり隠居するための建物で、本山などの大寺院によく見られます。
奈良時代、700年代に創建されたといいますからおよそ1300年前です。平安時代や鎌倉時代には宗教都市を作っていたようです。塔頭は何十とあったそうですが、現在は5つが残るのみです。
石畳の道を数百メートル進むと、最後に階段があり、門の先にグリーンの大きな屋根が見えてきます。太山寺の山門です。
低逓減率が美しい~三重塔
入って右手にあるのが、江戸時代初期の1688年建立の三重塔です。
江戸時代の塔だけあって、各層の装飾もよくできていますが、注目は屋根の逓減率(ていげんりつ)です。五重塔も同じですが、普通は上へ行くほど屋根を小さくしていくのですが、その逓減率が低めで、結果としてすーっと伸びている印象があります。逓減率が高い(下の屋根ほど小さい)と、もっと安定してどっしりした印象になります。
古い塔ほど逓減率が高く、現存最古の三重塔である奈良の法起寺や鎌倉時代に建てられた奈良・興福寺の三重塔と比べるとよくわかります。
内部には大日如来と四天王が祀られています。
国指定重要文化財~阿弥陀如来坐像
本堂左手にある阿弥陀堂は三重塔と同じ1688年の再建です。
鎌倉初期の寄木造りの丈六仏(身長1丈6尺の仏)です。1丈6尺はおよそ5メートル近くになりますが、これは立った状態での身長のことで、太山寺の阿弥陀さまは坐像で高さ9尺(約270センチ)なので、丈六仏と呼ばれる種類にあたります。
平安時代の雰囲気を残しており、世界遺産・平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の阿弥陀像に近い雰囲気の優しいお顔です。
鎌倉時代に再建された国宝・本堂
本堂は階段を上って、他よりやや高い位置にあります。本堂から三重塔を眺めることができます。
神戸市で唯一の国宝仏像は、以前『GFC淡路島から行く、兵庫県中部の文化財・パワースポットめぐり』でレポートしたことのある小野市の浄土寺の阿弥陀三尊像ですが、太山寺の本堂は神戸市で唯一の国宝建築物です。
鎌倉時代後期に再建されたもので、桁行7間、梁間6間の大きなお堂で、入母屋造、銅板葺きの造りになっています。屋根の勾配がゆるく、大屋根に対して下屋根の割合が広く、鳥でいうと翼の部分がかなり広げられた印象です。正面はすべて蔀戸(しとみど)を用いるなど、最古の仕様になっています。
蔀戸とは上下2枚に分かれた建具で跳ね上げ式に開き、外光や風雨を遮る目的で使われていたものです。外側に開いて風を取り入れられる窓で、現在でいうとすべり出し窓のようなタイプです。
格子戸の先がお内陣、ご本尊の薬師如来の両側を四天王が守っているように見えますが、薬師如来ということを考えると四天王ではなく12神将のうち4体なのかもしれません。
お堂全体は鮮やかな朱塗りになっています。高欄と呼ばれる縁側がぐるっと裏側までありますので、せっかくなので回ってみてください。
◆太山寺
住所:〒651-2108 兵庫県神戸市西区伊川谷町前開224
電話番号:078-976-6658
営業時間:8:30~17:00
定休日:無し
公式サイト:http://do-main.co.jp/taisanji/
数々の文化財、ロケ地にも使われる聖地~円教寺
姫路市街地のやや北にある書写山円教寺へは、山陽自動車道の姫路東インターから下道を15分ほど走ると書写山ロープウェーの登り口(山麓駅)です。GFC淡路島グランデシアからは1時間30分ほどです。
ロープウェー利用の方のための無料駐車場が山麓駅横にあります。または、姫路駅から路線バスが出ています。バスは30分くらいです。ロープウェーは5分で山上駅へ着きます。
ロープウェーからは、眼下の姫路市西部から揖保郡太子町方面が見渡せます。
境内までの道のり
山門までは、歩いて10分ほどの道のりです。途中には、眼下を見下ろせるスポットもあります。
途中には国指定重要文化財の無量院などの塔頭が点在しています。中に入ることはできませんが、季節によっては精進料理などをいただくことができるようになっており、予約すれば入場可能です。
懸け造りの摩尼殿
山門からさらに10分近く歩くと、巨大な摩尼殿(まにでん)が現れます。入り口からここまでは、マイクロバスも運行しています。
摩尼殿のご本尊は六臂(ろっぴ)如意輪観音、西国33カ所の札所本尊です。国指定の重要文化財四天王立像も安置されています。
摩尼殿は1921年(大正10年)12月に焼失しており、現在の建物は1933年(昭和8年)に再建されているため、国指定重要文化財ではありませんが、兵庫県指定有形文化財です。
懸造り(かけづくり)という、京都の清水寺と同じタイプの工法で、傾斜地や段状の敷地、池などに張り出して建てる際に、長い柱や貫で床下を固定してその上に建物を建てるものです。
再建されているとはいえ、90年前の建物です。柱などを見ると大きく質の良いケヤキが使われており、もし今これと同じものを建てたら、10億近い金額になりそうです。
摩尼殿の裏は、さらに奥へと続く通路があります。実はこの摩尼殿はまだ入り口で、この奥にメインの境内が控えているのです。
他では見られない特別な空間
山道を5分ほど行くと、開ける雰囲気がわかるアプローチに差し掛かります。
ここを通り抜けたら、飛び込んでくるぞ、という雰囲気がわかります。
三つ堂と呼ばれる、円教寺の中心地はどのパワースポットとも違う特別な雰囲気があります。午前、お昼、夕方で陽の指す方向が変わるとここの雰囲気も変わります。
右のお堂が本堂にあたる大講堂、真ん中が食堂(じきどう)、左が常行堂です。見えている建物はすべて国指定重要文化財です。
映画「ラストサムライ」や「本能寺ホテル」、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」など数々の撮影地になっています。食堂から見る大講堂も、より荘厳な雰囲気です。
大講堂の内陣には国指定重要文化財の釈迦三尊像(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)が安置されています。
食堂は修行僧の寝食のための建物ですが、現在は仏像などの寺宝を展示しています。開放的な造りの常行堂では、座禅体験などができます。
内部には、丈六阿弥陀如来坐像が安置されています。
食堂の裏側へ回ってみると、実はこちらが表側です。長さ約40メートルあり画角に収まりません。ここより長いのは京都の三十三間堂がありますが、高さもある2階建築としては他に見たことがありません。
ここからさらに坂を下ると、奥ノ院があります。
円教寺を開山した性空上人をまつるお堂で、こちらも国指定重要文化財、このまわりの神社の本殿や拝殿も国指定重要文化財です。
ロープウェー山上駅の乗り場の横には、かわらけ投げがあります。帰りにロープウェーの待ち時間があったら投げてみてはいかがでしょうか。
かわらけ投げは、厄除けなどの願いを込めて、高い場所から素焼きの土器を投げる願掛けの遊びです。戦国時代、武将が出陣する際に必勝を祈願して土器の酒杯を地面に投げつけていたことが起源とされています。
◆天台宗別格本山 書寫山圓教寺
住所:〒671-2201 兵庫県姫路市書写2968
電話番号:本坊寺務所 079-266-3327|円教寺会館 079-266-3240
営業時間:8:30~17:00
定休日:無し
拝観料:500円(中学生以上)(小学生 300円、未就学児童 無料)
公式サイト:http://www.shosha.or.jp/
◆書写山ロープウェー
住所:〒671-2201 兵庫県姫路市書写1199-2
電話番号:079-266-2054
営業時間:8:30~17:00
発車時刻:8:30から毎時00・15・30・45分
定休日:無し
料金:片道 大人600円・子供300円/往復 1,000円・子供500円
※発車時刻は曜日や期間、時期によって変動することがあります。また、料金は団体・障害者など各種割引があります。詳しくは公式ホームページなどで確認してください。
公式サイト:https://www.mt-shosha.info/
文化財で歴史に触れる
神戸と姫路の国宝や国指定重要文化財をご紹介してきました。鎌倉時代に建てられた建築物に、平安時代から続く修行寺院など、文化財に指定されることで保護され1000年後の私たちが歴史に触れることができます。
太山寺と円教寺以外にも、たとえば姫路には国宝で世界遺産の姫路城もあります。
参考記事:GFC淡路島から行ける!大河ドラマゆかりの地特集
GFC淡路島グランデシアからは、車で太山寺なら50分ほど、円教寺は1時間30分ほどです。拝観時間の目安は太山寺が1時間ほど、円教寺は山麓から2時間〜3時間ほど見ておきたいところです。できるだけ時間に余裕をもって、ぜひじっくりと文化財で歴史に触れてみてください。