GFC淡路島から行ける【西国三十三所】観音巡礼・兵庫、3霊場への旅
兵庫県には西国三十三所観音巡礼の札所が24番から27番まで4ヵ寺あります。そのうち27番札所になる姫路の圓教寺は以前にご紹介しました。
参考:GFC淡路島から行ける国宝・文化財の旅・神戸~姫路 | 隠れ家ヴィラ
今回は宝塚市の中山寺、加東市の播州清水寺、加西市の一乗寺の3ヵ寺をご紹介いたします。
西国三十三所 第24番札所~紫雲山中山寺
中山寺は、兵庫県宝塚市にある真言宗中山寺派の大本山で、山号は紫雲山です。西国三十三所観音霊場の第24番札所であり、多くの巡礼者が訪れます。
アクセスは、車なら中国自動車道の宝塚ICから国道176号線を経由して約10分、専用駐車場はありませんので、周辺の有料私営駐車場を利用します。公共交通機関では阪急電鉄宝塚線「中山観音」駅から徒歩約1分、JR宝塚線「中山寺」駅から徒歩約10分の場所にあります。
明治時代に開通した阪急宝塚線とJR宝塚・福知山線は、中山寺や清荒神など沿線の寺社への参詣客の輸送も担っていました。
明治43年の地図を確認してみますと、鉄道は開通し、阪急もJR(当時は国鉄)も今と同じ位置に駅ができています。住宅などの建物はほとんどなく、山手に作られたニュータウンもまだありません。100年以上前にはすでに門前町も繫栄していた様子が伺えます。
※時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)から作成
中山寺はおよそ1300年前の飛鳥時代に聖徳太子が創建したと伝えられており、日本で最初の観音霊場として知られています。その後、奈良・長谷寺の徳道上人が閻魔大王から宝印を授かり、本格的な観音霊場を開くようになったとされています。
山門は3代将軍徳川家光により再建されたもので、兵庫県指定文化財となっています。
長い参道を進み、石段を登りますが迂回してエレベーターを使用することもできます。
境内は広く、数十の伽藍が点在しており、すべてにお参りすると半日はかかりそうです。テーマパークに来たような気分になれます。
御本尊は本堂の十一面観音菩薩、平安時代後期作の国指定重要文化財です。この像は安産祈願や子授け祈願のご利益があり、特に女性や家族の安全を祈る場所として有名です。安産祈願の霊場として、皇室や武家、庶民など、多くの人々の信仰を集めてきました。
特に安産・子授け祈願で有名になったエピソードが安土桃山時代の豊臣秀吉です。子宝に恵まれなかった秀吉は、中山寺に熱心に祈願し、その結果、秀頼を授かったと伝えられています。秀吉は兵庫県神戸市北部の有馬温泉に、記録に残っているだけで9回訪れていますが、中山寺は大阪城と有馬温泉とのルートに近い位置にありますので、何度か訪れていたかもしれません。
さらに秀吉は、朝鮮出兵の際にも中山寺に寄進を行い、その際に寄進された宝塔が現存しています。秀吉の死後、側室の淀殿(茶々)と秀頼は、お礼参りに参拝、掛け軸を奉納し、今も中山寺に保存されています。関ヶ原の戦いのあと、1603年(慶長8年)には、片桐且元を普請奉行として、本堂、護摩堂、阿弥陀堂などの伽藍を再建しました。
また、近世では明治天皇の生母がこの寺の腹帯「鐘の緒」を受けて安産だったことから、戌の日には腹帯を求めて多くの妊婦さんが訪れる光景が見られます。妊婦さんだけでなく高齢者もできるだけ負担をかけずにお参りできるように、エスカレーター、エレベーターも設置されています。
※エレベーターが設置されている本堂前の石段
境内の奥の方には、2017年に再建された五重塔、青龍塔があります。
名前の通り美しいブルーで、すべてが新しくピカピカ光っています。現在の建築基準法ではこのような塔はほとんど建てられないので非常に貴重な五重塔です。
いちばん下層の屋根は裳腰(もこし)といって雨水を避ける庇のようなものです。
時間があれば、五重塔「青龍塔」に奉納する写経体験をしてはいかがでしょうか。般若心経を13時から1時間ほどで、写経できます。奉納料2000円で、筆ペンや用紙などはお寺にありますので持ち物は必要ありません。受付場所など詳しくは公式ホームページをご覧ください。
◆紫雲山中山寺
住所:〒665-0861 兵庫県宝塚市中山寺2丁目11-1
電話番号:0797-87-0024
拝観時間:9:00〜16:00 ※境内は24時間
拝観料:無料
公式サイト:https://www.nakayamadera.or.jp/
西国三十三所第25番札所~播州清水寺
兵庫県加東市にある播州清水寺は、中国自動車道「ひょうご東条IC」から車で約20分、駐車場も無料完備されています。電車ではJR福知山線「相野駅」から神姫バスで約35分です。
※播州清水寺、駐車場スペースから山門
播州清水寺は天台宗の寺院で、山号は御嶽山(みたけさん)です。西国三十三所第25番札所として知られています。
伝説では1800年前に法道仙人が開創したと伝えられています。推古35年(627年)に推古天皇の勅願により根本中堂が建立されました。また、神亀2年(725年)には聖武天皇の勅願で行基が大講堂を建立しました。
境内には、根本中堂や大講堂、薬師堂、地蔵堂、鐘楼などがあります。また、霊泉「滾浄水(こんじょうすい)」が湧き出ており、これを「おかげの井戸」と呼び、清水寺の名前の元となりました。水面に顔を映すと寿命が3年延びると言われています。
1913年(大正2年)に焼失し、1917年(大正6年)7月に再建された根本中堂は国登録有形文化財です。
天台宗では総本山の比叡山延暦寺の本堂を根本中堂と呼んでいます。播州清水寺のように本山クラスの寺院でもそれに倣っています。
内部に入ってお参りすることもできます。
本尊は十一面千手観音立像で、脇侍には毘沙門天と吉祥天が安置されていますが、30年に一度の開帳の秘仏です。前回は平成29年(2017年)に開帳されており、次回は2047年と少し先です。
伝説では開山した法道仙人による一刀三礼によって彫られたといいます。一刀三礼とは1彫りするごとに3度仏に礼拝しながら造り進むという昔の方法です。
1913年(大正2年)に焼失し、1920年(大正9年)に再建された鐘楼も国登録有形文化財です。スカートのような形の袴型鐘楼(はかまごしつきしょうろう)が特徴的で、開運の鐘と呼ばれます。
1913年(大正2年)に焼失し、1917年(大正6年)7月に再建された大講堂は西国三十三所の札所堂で、こちらも国登録有形文化財です。
内陣の中には源義経と武蔵坊弁慶が碁を打ったという伝説の碁盤が展示されており、札所本尊の千手観音坐像を拝むことができます(内陣入場料は100円)。
休憩所の清水茶屋では関西風のお出汁がおいしいシンプルなおうどん・おそばをいただくことができ、関連するお菓子やスイーツを購入できます。
※清水茶屋のきつねうどん
巡礼草創1400年を記念したスイーツ巡礼では、播州清水寺でしか買えないせんべいや、地元産の豆を使った黒豆ケーキなどが購入できます。
※清水茶屋のおみやげコーナーで購入したもの
◆播州清水寺
住所:〒673-1402 兵庫県加東市平木1194
電話番号:0795-45-0025
拝観時間:8:00〜17:00※入場は16:30まで/年中無休
拝観料:大人500円, 高校生300円, 小中学生無料 20人以上団体割引 大人450円, 高校生270円
駐車場:乗用車340台/無料
公式サイト:https://kiyomizudera.net/
西国三十三所第26番札所~法華山一乗寺
兵庫県加西市にある一乗寺へは、車なら山陽自動車道「加古川北IC」から約15分です。有料駐車場(普通車300円)があります。公共交通機関ではJR及び阪神電車の「姫路駅」から神姫バス「法華山一乗寺」行きに乗車、終点下車までおよそ35分です。
また、ローカル線の北条鉄道「法華口」駅からでもバスか徒歩で行くことができます。「法華口」駅は無人駅ですが、大正4年に建てられた築110年を超える駅舎は、国登録有形文化財に登録されており、趣のある佇まいです。駅舎の横には、一乗寺の三重塔を模したミニチュア版の『三重塔』があります。
※法華口駅と三重塔
時間がある方なら、巡礼道を40分ほど歩いて一乗寺へ向かってもよろしいかと思います。
※法華山一乗寺へ続く巡礼道
一乗寺は、インドから渡来した法道仙人によって650年、およそ1370年前に開かれたとされており、播州清水寺(1800年前)と同じですが時期がかなりズレており、このあたりの整合性はどちらも古文書の解釈により明確なことは分かりません。あるいは法道仙人は同一人物とは限らない可能性があります。
いずれにしても一乗寺は白雉元年(650年)に法道仙人によって開山、同時期に孝徳天皇の勅願により開かれたと伝えられています。西国三十三所観音霊場の第26番札所として、多くの巡礼者が訪れています。
境内は、石段によって大きく4段階に分かれています。石段を登ると、1つ目の常行堂が現れます。明治時代初期の再建、築150年と一乗寺の中では新しい建物ですが2層の堂々とした建築で、本堂が大解体修理を行った平成11年から10年にわたって仮本堂となりました。
さらに石段を登り、2つ目は国宝の三重塔です。平安時代1171年の建築で、中世からの火災などに負けず残っており、三重塔としては奈良の法起寺や薬師寺に次ぐ歴史を誇っています。
見どころとしては、和様で三手先(3段階で軒を支える)組み物や蟇股(かえるまた)などの彫刻といった平安時代の優美さに加え、多宝塔古建築特有の逓減(ていげん)率の大きさです。逓減率とは上層に行くほど屋根が小さくなる率のことで、この時代は1層目と3層目の屋根がかなり違います。時代が古くなるほど逓減率は大きくなります。
一乗寺には他にも国宝として「聖徳太子及び天台高僧像」(平安時代後期)があり、貴重な文化財として知られています。天台高僧とは天台宗の開祖・伝教大師最澄です。「聖徳太子及び天台高僧像」は奈良や東京など各地の国立博物館で展示されることがあり、一乗寺の宝物館にはレプリカが展示されています。
さらに石段を登ると、巨大な本堂が見えてきます。幾たびもの火災により焼失し、現在の本堂は4代目です。江戸時代初期の1628年に姫路藩主本多美濃の守忠政によって建立され、現在国の重要文化財となっています。
本尊の聖観世音菩薩は秘仏で、その御尊容は拝見できませんが、日頃の感謝と共にここまで参拝できた幸運を嚙み締めましょう。本堂からは、法華山を見渡すことができます。
特に、春は桜、秋は紅葉の名所としても知られています。特に秋の紅葉は美しく、多くの観光客が訪れます。
また、本堂の奥には、法華山や伽藍全体、および観音菩薩を守護するように護法堂や弁天堂、妙見堂があります。どれも鎌倉時代から室町時代に建てられた国の重要文化財です。本堂に隠れてあまりここまで参拝する人は多くありませんが、ぜひ見てほしい場所です。
※国指定重要文化財の弁天堂、妙見堂
大きい建築物ではありませんが、檜皮葺で繊細な造りが特徴です。中世鎌倉時代から室町期の神社建築様式の変遷を伝えてくれる、一乗寺のなかでは国宝三重塔に次ぐ歴史の貴重な建物です。
そこからさらに5分ほど奥へ歩くと、奥の院です。
開山した法道仙人を祀る開山堂があります。同時にここはこの世とあの世の境目でもあるようです。
開山堂の横には賽の河原(三途の川)が流れていますので、開山堂の縁側にはたくさんの石積みがされています。仏教の故事に由来する話で、親よりも先に亡くなった子供が、両親のために祈りながら河原の石で仏塔を造るといいます。
しかし完成する直前に鬼が来て、苦労して積んだ石塔を崩してしまうため、無駄な努力を現す言葉とされています。それでも子を亡くした親が我が子のためにこうして石積みを手伝っています。昔は病気などで大人になれずに死んでしまうことが多かったためこうした信仰が続いているようです。
◆法華山一乗寺
住所:〒675-2222 兵庫県加西市坂本町821-17
電話番号:0790-48-2006
拝観時間:8:00~17:00/年中無休 ※バスの運行には年末年始など運休の時期があります。
拝観料:500円(宝物館の拝観には、別途500円必要)※宝物館の予約については、2週間前までに要連絡
駐車場:乗用車340台/無料
公式サイト:https://kanko-kasai.com/spot/culture/itijoji/
浄土としての霊場を巡る旅へ
仏教は亡くなった人を供養するイメージがありますが、生きている人を癒す目的もあります。昔は飢えや戦争、伝染病などの病気も多く、死は今よりはるかに身近なものでした。死への恐怖を和らげるため、死んだあとは決して苦しみや悲しみのない世界に行けるというイメージが必要だったのです。お寺の境内はそれを表している一面もあるようです。華やかで穏やかな仏さまに見守られた極楽浄土の世界を体感することで、大事な人を亡くした悲しみと死への不安を癒すことができたのかもしれません。
GFC淡路島グランデシアを拠点に、心整う西国三十三所めぐりに挑戦してみてはいかがですか?