珈琲一杯から気軽に小旅行気分。築百三十年の歴史を感じる三重・四日市「伝七邸」で庭園と美食を堪能
百三十年の歴史ある木造建築の佇まいの中に、国の登録有形文化財の玄関棟や和室、四季折々の風情を味わえる日本庭園など、日本文化の魅力がふんだんに詰まった四日市「伝七邸」。
伝統美の風情ある空間で本格的な日本料理を堪能することができ、カフェタイムに訪れても情緒に満ちたひとときを過ごせる場所です。
目次
「伝七邸」の前身は政財界の要人や文化人が集う高級料亭
JR四日市駅からすぐ近く、四日市港に面した街並みの一角に立つ「伝七邸」は、明治29年に東洋紡創始者・伊藤伝七の別邸として移設。明治三十九年からは「料亭浜松茂」として、渋沢栄一をはじめとする政財界の要人や文化人が集う四日市の迎賓館的存在となり、高級料亭として明治、大正、昭和、平成と百年以上にわたってその名を歴史に刻んできました。昭和天皇が戦後巡幸の際に立ち寄られたこともあったといいます。
平成二十七年に「料亭浜松茂」が建物の老朽化と後継者不在のため歴史の幕を閉じた後、胡麻油で有名な九鬼産業の創業家当主・十一代目九鬼紋七氏が再建に乗り出し、“人と文化が交流する料亭”として新たな歴史を歩み始めました。
各部屋からは四季折々のお庭の景観が眺められるつくりに
「伝七邸」の館内には国の登録有形文化財「さつきの間」や升目の格天井(ごうてんじょう)が格式高い「中広間」、個室として利用できる「とこなめの間」、「萬古の間」など6種類の部屋を用意。
各部屋ともお庭に面しており、百年以上の歴史を刻んできた空間でお庭を眺めながら日常を離れた特別な時間を過ごすことができます。
それぞれに趣向を凝らしたお庭では、山茶花や椿、梅、さつきやつつじ、ざくろ、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色など、四季折々の景色を窓越しに眺めることができ、訪れるたびに新たな出会いが得られます。
「中広間」から見えるお庭は京都の庭師の手によるもの。本格的な日本庭園の味わいが感じられます。
日本庭園の眺めとともに過ごす贅沢なカフェタイムも
歴史の風情に包まれた空間でお庭を眺めながらのひととき。そんな贅沢な時間を食事だけでなくカフェの利用で楽しめるのも「伝七邸の魅力」です。
ランチの後の時間、日本庭園の眺めが広がる「中広間」は珈琲一杯だけで過ごすことができます。
「伝七邸」名物の「おまっちゃ珈琲」(550円)は、珈琲をお抹茶のように目の前で点ててくれる一品。茶筅(ちゃせん)で点てることで、珈琲本来の香りが広がります。
お茶碗も本格的な陶器を使用しており、ここでしか味わえない贅沢な一杯に。目の前で珈琲を点ててくれるというレアな体験はSNSでも評判になっています。
パティシエスタッフによるデザート(1品300円※写真はデザート盛り合わせ)は上品な甘みが魅力。「おまっちゃ珈琲」のまろやかな味わいとぴったりです。
館内には洋室にリノベーションした喫茶ルームもあり、こちらでゆっくりとカフェタイムを過ごす方も多く見られます。
人気料理人が手をかけた極上の日本料理を堪能
お庭の見える部屋でランチを楽しみたい方に人気のメニューは「黒毛和牛ビーフシチュー御膳(写真上)」と「御造り御膳」。
「黒毛和牛ビーフシチュー御膳」はディナーメニューのすき焼きコースで提供される黒毛和牛を使用。牛肉を煮込んだソースでさっと火を通しながらいただくことで、牛肉そのものの柔らかい美味しさをソースの旨みで味わえる創作料理です。
「御造り御膳」は季節のお刺身が品数豊富に盛り付けられた贅沢な一品。色とりどりの野菜も盛り込まれ、“日本料理は目で食べる”という言葉そのままに五感で楽しめるメニューとなっています。
お米は伊賀米コシヒカリ特Aランクを使用。どちらのランチも2,750円という良心的な価格に驚かされます。
「伝七邸」の味を存分に堪能したい方には、八寸や御造り、椀物や焼き物からデザートまで揃った「ランチコース」(8,800円、税込サ別)もおすすめ。四季折々のお庭を眺めながら極上の時間を過ごせます。
こうした五感で味わう日本料理を提供してくれるのは料理長の山田桂志さん。吉兆本店を経て東京・麻布十番で人気の日本料理店のオーナーシェフを務めた経歴の持ち主です。
その腕を見込んで数多くのお店から誘いを受ける中で「伝七邸」に魅力を感じて、地元三重に戻って腕をふるっています。
スタッフの案内で館内を見て回ることも
訪れた方が「伝七邸」の魅力を余すところなく味わえるように、スタッフに声をかければ館内を案内してもらうこともできます。
サービス担当として食事やカフェ、情報発信を統括する山口久仁さんは実家が「料亭浜松茂」と隣り合わせという環境で生まれ育ったこともあり、「伝七邸」の歴史や文化を丁寧に説明してくれます。
玄関から部屋へ向かう廊下には四日市の伝統工芸「萬古焼」作家の作品が陳列されており、陶器好きの方ならずとも足を止めて見入ってしまいます。
「落語会」を定期的に開催。伝統文化の発信に注力
“人と文化が交流する料亭”をコンセプトに打ち出している「伝七邸」では、文化や教養を発信するイベントも開催しています。
今年四月には笑点でおなじみの六代目三遊亭円楽の総領弟子・三遊亭楽生さんを招いて落語会を開催。次回は七月に開催予定で、今後も年3回のペースで実施していく予定とのこと。
食事と落語を堪能した後は懇談の場も設けられており、本格的な古典落語を間近で楽しみながら生の声に触れられる貴重な機会になります。(※落語会のご予約は電話予約になります)
また、“人と文化が交流する料亭”をコンセプトに掲げる「伝七邸」では、定期的に公開心理学講座「ココロキッサ」を開催。鈴鹿医療科学大学の准教授・上原俊介氏を講師に招いて、「自分を見つめるこころ:自意識の世界」など、専門的な研究成果を元にしたお話を聞きながら心理学を身近に感じて、実際の生活に生かせる知識を得ることができます。
百年を超える歴史的建造物は全国各地にありますが、歴史の息吹を感じながら気軽に本格的な日本料理やカフェタイムを楽しめる場所はなかなかないもの。湯の山スパシアに泊まりに来た際にはぜひ訪ねてみたいスポットです。
◆伝七邸
住所:〒510-0042 三重県四日市市高砂町6番12号
電話番号:059-351-2491
営業時間:ランチ 11:30~13:30(L.O.)ディナー 17:00~21:00(L.O.)
カフェ 不定休(お問い合わせください)
定休日:月曜 ※祝日の場合も休
駐車場:12台
全席椅子席
公式サイト:https://denshichitei.jp